2007年02月09日

地産地消

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

地産地消(ちさんちしょう)とは、地域生産地域消費(ちいきせいさん・ちいきしょうひ)の略語で、地域で生産された農産物や水産物をその地域で消費すること。


== 概要 ==
*''食生活改善運動と農産物の生産種類の多様化''
地産地消という言葉は、農林水産省生活改善課(当時)が1981年から4ヶ年計画で実施した「地域内食生活向上対策事業」から生じた。なお、[[篠原孝]]は「1987年に自分が造語した」と、新聞・雑誌等で主張している(例:農文協「現代農業増刊 食の地方分権」2003年5月)。しかし、すでに1984年に雑誌「食の科学」で秋田県職員が地産地消を使用しており、ほぼ同時期に、当該事業と生活改善活動について紹介した農水省の公報誌にも地産地消の語句が掲載されている。これらの事実により、このころまでにはすでに、全国各地の農業関係者の間に広まっていた言葉であることが判明している。

当時は、農村では伝統的な米とみそ汁と[[漬物]]の食事パターンをしていたため、塩分の取り過ぎによる[[高血圧]]などの症状が多く見られた。戦後、日本人の死亡原因第1位の[[感染症]]([[結核]]など)が克服され、当時の死亡原因第1位となった[[脳卒中]]を減らすためには、原因の1つとみられる高血圧の改善が必要となった。また、伝統食の欠点(塩分の取り過ぎの他、[[脂肪]]・[[カルシウム]]・[[タンパク質]]の不足など)を改善することも国民の健康増進のためには必要と考えられ、不足しがちな[[栄養素]]を含む農産物の計画的生産と自給拡大の事業が実施され、同時に生活改良普及員らによって周知事業も行われた(当時は1[[ドル]]240[[円 (通貨)|円]]程度であり、農産物輸入をしようとしても高額になってしまい、不足栄養素を補うという目的を果たせなかったため、安価な国内生産を選択している)。

このような活動の中、特に農村においては他地域から不足栄養素を多く含む農産物を買い求めると[[エンゲル係数]]の増大を招いてしまうため、地元でそのような農産物を作ろうということで「地産地消」という語が発生した。雑誌「食の科学」1984年2月号には、秋田県河辺町がこの事業に取り組んで緑黄色野菜や洋野菜の生産量を増やす運動を実施し「地産地消による食生活の向上」を標榜していたことが明記されている。

このように、当時の地産地消は、伝統的な食生活による栄養素・ミネラルバランスの偏りの是正によって健康的な生活を送るため([[医療費]]削減圧力)、余剰米を解消する[[減反]]政策の一環として、他品目農産物の生産を促すため([[食料管理制度]]の維持)、気候変動に弱い[[稲作]][[モノカルチャー]]から栽培農産物の種類の多様化によってリスクヘッジをするため(農家の収入安定)など、多様な経済的インセンティブによって推進された。

*''[[スローフード]]運動の影響''
産地と消費地の間の交通網が発達した現代社会では、遠隔地の産物を消費地に輸送することにより、様々な食物が産地や季節を問わず手に入る、いわば「遠産遠消」が可能となった。現在の日本は、[[バナナ]]や[[アボカド]]など、日本で生産できないものも店頭に並ぶ。更に、[[小麦]]、[[ソバ]]、[[タコ]]など日本食に必要な食材ですら、大部分を輸入に頼る時代である。

このような農産物の[[流通]]の変化は、家計における[[エンゲル係数]]を下げて、可処分所得をその他の消費生活に振り分けようとする消費者の購買行動、すなわち、より安い食品を求める消費者に呼応した経済現象であり、かつ、豊かな[[食生活]]を送るために伝統的な国内農産物に拘らない食事の浸透に従っている。

しかし、80年代に「[[一億総中流]]意識」が国民全体に浸透し、[[バブル経済]]期に始まる「(欧米の)本物志向」が90年代中盤の[[円高]]によって定着すると、[[円安]]期に入った90年代末から国内の高い農産物でも[[付加価値]]をつけることによって市場での競争力があることが分かり、[[スローフード]]運動も手伝って「地産地消」が農産物流通や[[グルメ]]におけるキーワードとなった。

ただし、現在使われる「地産地消」という言葉は、スローフード運動の影響で「伝統食の復権」などという意味に置き換わり、80年代の「地産地消」とは全く逆の意味で使用されたり、「[[身土不二]]」、すなわち「地元の食品を食べると健康によい」という思想的な言葉として使用されたりしている。
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